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【業界別財務分析】ドラッグストア業界編

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今回はドラッグストア業界の財務指標について分析します。同じ業界内でも経営戦略の違いにより、「損益計算書の有益性」や「貸借対照表の資産の保有形態」が異なります。財務諸表を用いてドラッグストア業界の特性を分析します。

ドラッグストアの特性

ドラッグストア業界の市場規模は、2017年には6兆8,504億円(出典:日本チェーンドラッグストア協会推計)にまで成長しています。2004年から2009年までの年平均成長率(CAGR)は5.3%、2010年から2015年では同1.7%に鈍化しましたが、2016年から2017年では再び成長率が増加しています。売上増加に最も寄与しているのは食品です。2017年には対前年比8.7%増になっています。また、食品ほどではないものの、化粧品類も堅調に増加しています。医療用医薬品、一般用医薬品(OTC)も増加が続いています。

一方で、一般用医薬品のインターネット販売の解禁などのほか、コンビニやスーパーとの競合が激化しています。国内ドラッグストア協会の資料によると、2014年度の国内のドラッグストアは501社で、約1万8,000店舗が国内にあると推計されています。また、2014年4月の消費税増税後は業界再編が進んでおり、イオンがウエルシアホールディングスをTOBにより連結子会社化し、その傘下にCFSコーポレーション(ハックドラッグ)など3社を抱えてました。事業を集約して収益力を向上させる狙いがあります。地方の地場のドラッグストアなどでは、さらに業界再編が進んでいます。ドラッグストア業界で売上高が高い順番は、ウエルシアホールディングス、ツルハホールディングス、マツモトキヨシホールディングス、コスモス薬品、スギホールディングスであり、上位5社の合計市場占有率は4割程度と推計されています。

ウエルシアHDはイオン傘下のドラッグストアチェーンとなり、積極的な借り入れによる出店と買収により事業を急激に拡大し、2016年には売上規模で業界首位になりました。また、24時間営業、食品の取り扱いなど利便性の向上により顧客獲得力を強化しています。2017年度は食品が売上高に占める割合が最も高くなっています。PB商品の開発では、購買グループであるハピコム、イオンのトップバリューだけでなく、独自の商品開発にも注力しています。

大手ドラッグストア各社の株主総資本利益率(ROE)

国内の大手ドラッグストアのROEは、業界平均で11.8%です。大手ドラッグストア8社の中で最もROEが高いのはコスモス薬品で16.2%です。コスモス薬品は、エブリデイロープライス戦略を取っており、安売りを期待して購入を控えるといったことがなく、価格戦略がうまく機能しています。また、ドラッグストア業界の成長要因である食品の取り扱いも多く、スーパーやコンビニエンスストアからも顧客を獲得しています。取り扱っている商品が、ドラッグだけであるか、それ以外にも食品や日用品まで商品ラインナップを広げているか売上や収益率に大きく影響しています。

大手ドラッグストア各社の株主総資本利益率(ROE)

ROEが高いサンドラッグ(16.0%)は、免税対応店を増やし訪日外国人客の獲得に成功しています。また、独自に編み出したもうかる仕組みを長年にわたって磨き上げ、出店基準から従業員の作業手順まで、すべて数字に置き換えて「見える化」するなどの効率経営に注力しています。

ツルハホールディングでは、既存店の活性化や物流に連動した売り場作業の効率化を強化しています。同社は食品の導入を推進しており、2015年度までに加工食品などの商品ラインナップを一巡させ、低温で販売する乳製品や惣菜、デザートといった日配食品も1,000点に導入しています。食品は集客力を強化する一方で、粗利益率が低いため全体の利益率が低下するため、2016年度からは物流センターの配送体制を改革してカテゴリー別に仕分けした状態で店舗に納品するなどの体制を整備し、店舗では品出し作業などの時間を削減することで人件費の削減に成功しました。

マツモトキヨシホールディングスは、都市型でドラッグ、トイレタリー特化型の店舗を運営していましたが、北陸新幹線の開通に伴い2013年末に北陸地方においてシメノドラッグというドラッグストアを約60店展開していた示野薬局を買収しました。都市部で競争力があるマツモトキヨシのノウハウをシメノドラッグに採り入れています。具体的には、プライベートブランドの日用品や化粧品、一般用医薬品、健康食品などを充実させています。マツモトキヨシのイメージは訪日外国人などにも人気があり、免税対応もしています。郊外ではシメノドラッグ、都市部や幹線道路沿いではマツモトキヨシのブランド名を使い分けています。

大手ドラッグストア各社の事業収益性、効率性、財務レバレッジ

ROE(株主総資本利益率)を分解すると、「当期純利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」の3つに分解できます。

ROEの分解(ヂュポンの分解)

上の分解式の3つ目の要素である「財務レバレッジ」は、自己資本比率の逆数になります。企業が使用する総資本額が自己資本の何倍になっているかを示す指標です。例えば、企業が使用する総資本のうち他人資本による資金調達額があれば、財務レバレッジの数値は1.0よりも大きくなり、売上利益率と総資本回転率から得られる「資本利益率」を拡大する効果があります。この拡大効果は、「てこの作用」に類似していることから「財務レバレッジ」といわれています。

ドラッグストア各社の株主資本利益率を分解して、事業の収益性と効率性を見てみましょう。

上の図表で最もROEが高かったコスモス薬品は、財務レバレッジが2.3で最も高く、当期純利益率も3.2%で高いことが要因です。一方、ROEが最も低いスギホールディングス(ROE:10.1%)は、総資産回転率は最も高いものの、当期純利益率が2.3%であることが低迷の原因です。2016年4月の国内薬価の引き下げを受け、利益率が高い調剤部門が振るわなかったこと、また、積極的な新規出店に伴い販促費が増加し、新卒やパートなどの採用を増やしているのも負荷になりました。

大手ドラッグストア各社の総資産回転率は、業界平均である2.2回から大きなバラツキがありませんが、マツモトキヨシホールディングスは総資産回転率が1.8回と業界平均より低く、資産の効率性が競合他社より低いことがわかります。

財務レバレッジの業界平均は1.9です。イオンの傘下にあるウエルシアホールディングスとコスモス薬品は財務レバレッジが2.3と最も高く、総資産に占める負債の割合が高いです。一方、マツモトキヨシホールディングスは、財務レバレッジが最も低く(1.5)、総資産回転率も高いことからROEの低迷要因になります。

大手ドラッグストア各社の生産性

大手ドラッグストア各社の生産性

大手ドラッグストア各社の生産性について見てみましょう。生産性では、「一人当たり売上高」「一人当たり粗利額」を見ることにします。サンドラッグの一人当たり売上高:116,718,039円、一人当たり粗利額:29,179,510円で最も生産性が高いことがわかります。一方で、ココカラファインの一人当たり売上高:63,038,213円、一人当たり粗利額:16,894,241円で業界平均と比べて30%程度低いです。

生産性が高い企業は、一般的に社員の昇給や賞与アップ要求にも対応できるため、事業を発展させるための目指すべき姿にあるといえます。給与水準と労働生産性については、こちらの記事も参考になります。

大手ドラッグストア各社のコスト構造

大手ドラッグストア各社のコスト構造について見てみましょう。ここでは、「売上高対売上原価率」「売上高対人件費率」「売上高対営業利益率」に着目します。

大手ドラッグストア各社のコスト構造

各社の売上高対費用比率を見ることで、各社が何にお金を投資しているかについての投資戦略を探ることができます。

小売業の場合は、売上原価の主要科目は商品の仕入れになります。コスモス薬品は、売上原価率が80.2%と最も高く、また業界平均も72.9%と高く、ドラッグストア業界は薄利多売のビジネスモデルであるといえます。次に、売上高対人件費率を見ると、おおむね業界平均の9.8%から各社とも大きなバラツキはないことがわかります。

営業利益率は、業界平均で5.1%です。サンドラッグの営業利益率(6.4%)が最も高く、ココカラファインが3.5%で最も低いです。このことから、ドラッグストア業界で利益率を向上させるためには商品の仕入れ値をどれだけ下げるかが重要であることがわかります。プライベートブランドを積極的に展開しているマツモトキヨシホールディングスは、その点売上高原価率を低減できており、結果的に営業利益率も6.0%を確保しています。

まとめ

今回は、大手ドラッグストア各社の財務分析を行い、財務諸表から各社の経営戦略について考察してみました。市場が成長から成熟市場に向かっていく中で、各企業が取っている戦略が財務指標からも読み取ることができます。

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WRITER筆者

MBA CROWDSOURCING 編集部