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【業界別財務分析】化粧品業界編

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化粧品業界の財務指標と生産性指標について分析します。同じ業界内でも経営戦略の違いにより「損益計算書の収益構造」や「貸借対照表の資金調達構造」が異なります。今回は、財務面から化粧品業界の特性を調べてみます。

化粧品業界の財務特性

化粧品はブランドイメージが重要であるため、女性に人気のある芸能人やモデルをテレビCMやインターネット広告に起用して商品価値を高めています。そのため、巨額の広告宣伝費が必要であり、他の日用品業界と比較して費用に占める広告宣伝費の比率が高くなる傾向があります。また、化粧品メーカー各社のチャネルや販売形態によって費用に占める人件費率が異なります。店舗を構え、美容部員がカウンセリング形式で販売する「制度品」がメイン商品である場合は人件費負担が大きくなります。一方、対面販売が義務付けられていないドラッグストアやコンビニエンスストアなどの量販店やインターネットで販売される「一般品」がメイン商品である場合には、人件費負担は他の日用品とあまり変わりません。販管費にある「広告宣伝費」と「人件費」に着目すると、各社の販売戦略が見えてきます。

化粧品業界各社の株主総資本利益率(ROE)

化粧品業界各社のROE

国内の主要化粧品メーカーのROEは、好調な企業で10%から20%です。化粧品メーカー別のROEを見ると、通信販売がメインであるシーズ・ホールディングスのROEは約19.3%(2017年7月決算)、訪問販売がメインであるノエビアホールディングスのROEは約12.0%(2017年9月決算)、店舗販売がメインであるファンケルのROEは約8.2%、訪問販売がメインであるポーラ・オルビスホールディングのROEは約13.7%(2017年12月決算)、全方位型販売の資生堂のROEは約5.4%(2017年12月決算)です。

事業の収益性と効率性、財務レバレッジ

ROE(株主総資本利益率)を分解すると、「当期順利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」の3つに分解できます。

ROEの分解(ヂュポンの分解)

上の分解式の3つ目の要素である「財務レバレッジ」は、自己資本比率の逆数になります。企業が使用する総資本額が自己資本の何倍になっているかを示す指標です。例えば、企業が使用する総資本のうち他人資本による資金調達額があれば、財務レバレッジの数値は1.0よりも大きくなり、売上利益率と総資本回転率から得られる「資本利益率」を拡大する効果があります。この拡大効果は、てこの作用に類似していることから「財務レバレッジ」といわれています。

化粧品メーカー各社の株主資本利益率を分解して、事業の収益性と効率性を見てみましょう。

上の図表で最もROEが高かったシーズ・ホールディングスは、当期純利益率(事業の収益性)が14.0%で最も高いことが寄与しています。一方、最もROEが低かった資生堂は、当期順利益率が5.4%と最も低かったことが原因です。財務レバレッジの観点で見ますと、こちらは資生堂が2.2倍と最も高いことがわかります。このことから資生堂は、当期純利益率を改善することができれば、財務レバレッジ効果が他社より大きいため、ROEを大幅に改善できることがわかります。

化粧品メーカー各社の生産性

化粧品メーカー各社の生産性

化粧品メーカー各社の生産性について見てみましょう。生産性では、「一人当たり売上高」「一人当たり粗利額」を見ることにします。ポーラ・オルビスホールディングスが、「一人当たり売上高:59,032千円」「一人当たり粗利額:48,997千円」で最も高いことがわかります。また、「粗利額」は「付加価値額」と近似値になりますので、ポーラ・オルビスホールディングスは、労働生産性(付加価値額➗従業員数)も最も高いといえます。生産性が高い企業は、一般的に社員の昇給や賞与アップ要求にも対応できるため、事業を発展させるための目指すべき姿であるといえます。給与水準と労働生産性については、こちらの記事も参考になります。

化粧品メーカー各社のコスト構造

化粧品メーカー各社のコスト構造について見てみましょう。ここでは、「売上高対売上原価率」「売上高対人件費率」「売上高対研究開発費率」「売上高対広告宣伝費率」に着目します。

化粧品メーカー各社のコスト構造

各社の売上高対費用比率を見ることで、各社が何にお金を投資しているかについての投資戦略を探ることができます。

資生堂は、「売上高対人件費比率」と「売上高対広告宣伝費率」が高いことから、優秀な人財への投資とプロモーションへの投資が活発であることがわかります。ポーラは、他社に比べると全般的に投資を抑えていることで、高い営業利益率を獲得していることがわかります。ファンケルは、「売上高対売上原価率」と「売上高対広告宣伝費」が高いことから、製品へのこだわりや店舗の美容部員に投資していることがわかります。ノエビアは、「売上高対売上原価率」が同業他社に比べてかなり高いことから、製品で差別化を図ろうとしていることがうかがえます。

まとめ

今回は、国内化粧品業界各社の財務分析を行い、財務諸表から各社の経営戦略について考察してみました。財務諸表から各社の仮説が導き出せたら、経営陣のインタビュー記事などの定性情報で検証してみることも有効です。

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WRITER筆者

MBA CROWDSOURCING 編集部