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<今を読み解くキーワード > ~ 製造業の国内回帰 ~

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今を読み解くキーワードと題して、今回は「製造業の国内回帰」をテーマに押さえるべきポイントを説明します。

進む国内回帰

国内の需要が成熟し、製造拠点を中国やASEANに設けるなど製造業のグローバル化が進む一方で、海外の製造拠点を日本に移転させる動きも表れています。これは製造業の国内回帰(リショアリング)と呼ばれています。

経済産業省が2016年に実施した調査によれば、海外生産を行っている製造業の企業のうち、11. 8%が過去1 年間で国内生産に戻しており、特に自動車、電気機械、金属製品、飲料、アパレルといった業界での国内回帰が多いようです。同調査によれば、国内回帰には為替レートや人件費の上昇といった要因が挙げられます。

確かに国内総生産(GDP)あたりの名目賃金を表す単位労働コストの推移を見ると、中国やASEAN諸国と日本の差は縮まってきてはいます。しかし、依然として日本の方が単位労働コストは高い水準にあり、コスト面だけをもって国内回帰という現象を説明することは困難です。そのため、国内回帰は円安や人件費高騰を背景とした一時的かつ局所的なもので、長期的に見れば、成熟期を迎えている国内への回帰よりも海外進出がより進んでいくだろう、というのが一般的な理解となっています。

コストだけでなく、WTP(支払意思額)という観点で捉える

確かに、大量生産ができて人件費がコストの多くを占めるような業種については、コスト的な観点で国内回帰を捉えられるでしょう。しかし、生産と消費の場所が近い、あるいは単価が高いといった特性を持つ業種については、WTP(Willing to pay:支払意思額)という観点も含めて理解するべきです。つまり、生産拠点や研究開発拠点を特定の地域に集めることで、新たなイノベーションを生むことができる点も考慮すべきです。例えば、サムスン電子は器興から平澤にまたがる世界最大級の半導体クラスターを構築し、収益力拡大を図りました。その結果、半導体の好況もあいまって、17年1~3月期の営業利益率は40%を記録しています。

製造業の国内回帰

また、日本における産業クラスター形成政策の結果、約17%の企業が、クラスターのプロジェクトへの参加が新たな研究開発に影響したとして、11 %の企業は特許出願にまで至ったと回答しています。これらの事例や調査を鑑みるに、国内回帰は、生産拠点や研究開発拠点間の連携を高めることで、新たな価値を創造することにつながるのではないかと考えられます。もちろん、クラスターの考え方自体は以前からあるが、顧客のニーズが多様化し、多品種少量生産が求められる今だからこそ、国内回帰を通じたクラスター形成が求められていると考えられるのです。

製造業における課題の一つとして収益性の低さが挙げられますが、収益性向上のためにはコスト低減だけではなく、イノベーションを通じた付加価値の創出が不可欠となります。現在の国内回帰の動きは、コスト削減という短期的なものではなく、付加価値向上に向けた将来的な投資とも捉えることができます。業界によって実現性に差異はあると考えられますが、国内回帰はWTP向上のための戦略オプションの一つになり得るのではないでしょうか。

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WRITER筆者

MBA CROWDSOURCING 編集部