事例・特集

<変革の舞台裏 ケース5> 商品企画部との連携に悩む海外販売責任者の苦悩(後編)

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本シリーズでは、変革を推進する上でハードルとなるさまざまな課題についてケーススタディを通じて具体的に検証し、解決の方向性を探っていきます。前編では会社の状況について説明し、後編で課題解決と対策の方向性をお伝えします。前編をまだ読んでいない方は、まずは前編からどうぞ。

低価格商品を販売したい海外販売部 VS 高価格商品の開発を続ける商品企画部

~ 差別化商品の海外展開をいかにして実現するか ~

登場人物&サマリー

現状の整理

国内においては圧倒的ナンバーワンシェアであった碇工業であるが、海外展開においては後発組であった。国内においては歴史が古く、競合があまりいない状態からシェアを拡大することができた一方で、海外にはすでに価格競争力の高い先行プレイヤーが存在している状況である。このような状況に対し、付加価値を付けた商品を中心に展開してはいるものの、販売ボリュームが取れないため、価格特化した商品が欲しいというのが海外販売部の要求であった。この要求通り新たな商品を投入することで、うまくいくだろうか。元来、碇工業が取ってきた戦略は、狭域ターゲットに対してWTP(Willingness to Pay=顧客が支払う価格)を高める差別化・集中戦略である。今後は、海外の広域ターゲットに対して、差別化戦略で攻めようというのが商品企画部の意向であり、コストリーダーシップ戦略で攻めようというのが海外販売部の意向である。

このようなケースにおいて、後者の展開を図ることは、失敗に終わるケースが多い。というのも、差別化戦略の実現とコストリーダーシップ戦略の実現においては、大きな壁が存在するためである。環境の変化に伴い、戦略を変えるだけでは、当然ながら新たな戦略がすぐにうまく機能することはない。戦略と組織、人財は一貫性を持っており、戦略に合わせてこれらをすべて変革していかなくてはならない。コストリーダーシップ戦略を実現しようとなると、商品仕様を変えるだけでなく、徹底したコスト削減を実現する人財の能力開発、会計や情報、人事評価などのシステムの変更、社員が共通認識で持つべき価値観の変革など、すべての要素をコストリーダーシップ戦略に最適化させていかないことには、真の価格競争力を持つことは難しいのである。

競争優位の基本形

しかしながら、現在の碇工業のように差別化商品を海外の広域ターゲットに展開しようとしても、競合からシェアを奪取することができないケースが多い。では碇工業はどうすべきか。

解決の方向性

碇工業のこれまでの強みを考えると、いきなり海外の広域ターゲットを相手にするのではなく、碇工業の提供する高付加価値を求める新たなドメインを見つけることが重要となる。自社の技術が活かせるのであれば、今のターゲット業界とは違う業界に活路を見出せる可能性もある。いきなり広域に自社領域を広げるのではなく、ニッチ領域を地道に少しずつ拡大するという方針で、次の差別化ニッチ市場をいかにして見つけるかが一つ目のポイントとなる。

では、ニッチ市場を見つけられなかった場合はどうすべきか。その場合、競合他社が展開している商品において、満たされていないニーズ(アンメットニーズ)は何かを探ることが重要となる。今の競合商品では満たされておらず、一定のスイッチングコストを払ったとしても切り替えるに値するくらいに、求められるニーズは何なのか、それを求めている顧客はどのような特性の顧客かを探り当てることが重要となる。そのニーズに絞って付加価値をつけることができれば、競合からのシェア奪取を実現する道が見えるのである。しかしながら、このアンメットニーズは、外部機関を使った調査だけではなかなか探りにくく、商品企画部では把握をしにくい可能性がある。一方、最もその情報を得ているのは、現場でお客様と接している海外販売部であるはずである。海外販売部が現場での”アンメットニーズ”を発見し、商品企画部と連携しながら商品開発を図ることが、二つ目のポイントとなる。

なお、これらの実現が難しい場合、コストリーダーシップ戦略へ転換するしか道がなくなるが、先行プレイヤーがいる中においては、この戦いはできる限り避けるべきである。それでも収益性が見込めるから実施するという場合は、新たな商品展開を担う組織を、完全に別組織として立ち上げるなどして、これまでのしがらみがない状態で、戦略-組織-人財の新たな一貫性を構築することが求められる。

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WRITER筆者

MBA CROWDSOURCING 編集部