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【第4回】経営戦略としての紹介営業 <全4回特集>

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今回の特集では、顧客満足を新規顧客の獲得と企業の収益向上につなげるCRV(Customer Recommendation & Referral Value)に注目します。CS向上が企業の収益につながるのであれば、会社としてCS向上に集中でき、CSを上げることで利益が上がる素晴らしい経営を実現することができます。「経営戦略としての紹介営業」をテーマに全4回に分けて紹介します。今回はその第4回(最終回)です。

狙って紹介・口コミを獲得する「能動的な」CRV(顧客紹介・口コミ価値)向上活動

CRV(顧客紹介・口コミ価値)向上活動を推進する上でのポイントを紹介したいと思います。取り組みの全体像や活動の流れ、より詳細な内容に興味のある方は、書籍『経営戦略としての紹介営業』を読んでいただき、さらには、出版記念セミナーに来場いただければと思います。ここでは、紹介・口コミを狙って獲得する能動的な活動を推進する上で、大切になる3つのポイントを紹介します。

コンテンツを整理する

紹介や口コミを考えるとき、何によって広めてもらうのか、紹介材料を絞り込む必要があります。

① 商品(サービス、機能、価値などを含む)

② 会社

③ 人(担当・情報)

紹介・口コミされやすい材料

これは皆さんが所属されている業界によっては当たり前と感じる内容かもしれません。一方で、BtoBで既存取引先との関係によって成長してきた会社では、この重要な点が未整理であることが多いのです。少し前の建設業界を例に挙げると、「何でもできますよ(何でも建てられますよ)」といっている会社が多かったのですが、これではお客様からすると、何を紹介していいのか、何を口コミしたらいいのかが分からないのです。自社を紹介・口コミする理由、言い換えると、自社が選ばれる理由を明確にしていくことが大切で、「良さは顧客の方が分かっているはずだから、どういった内容で紹介・口コミしていただくかは顧客に任せよう」では、受け身の活動にしかなりません。

自社のサービス以外で紹介・口コミをいただく

これは題名だけではイメージすることが難しいかもしれませんが、営業と会う理由や店舗に来場する理由を、自社サービスの購入機会以外に作るということになります。これがなぜ必要かというと、日常品のような場合を除き、車にしても、住宅にしても、企業におけるシステム投資にしても、今すぐ買いたい顧客は、もうすでに買ってしまっていて、検討を始めていない顧客しか市場に残っていない状態となっているためです。また、成熟市場の中で、以前のように給与や売上が上がる期待を持てなくなっています。このため、顧客がなるべく新しい投資や購入を控える動きになっていることも要因の一つです。

そういう中では、今すぐ購入を検討している「今すぐ客」というのは会うのが大変になりますし、紹介元が紹介できる人を探そうとしても、周囲にそういう人がいないということになります。そのため、新しい顧客を紹介してもらおうという時に、自社サービスの販売が前提となると、なかなか紹介を得ることができなくなってしまいます。では、自社サービス以外で紹介・口コミを頂くということはどういうことなのでしょうか。

ハーレーを事例として挙げてみます。ハーレーが所属するバイク市場は、衰退市場で売上は右肩下がりの状態です。実際、日本国内において多くのオートバイメーカーの売上は伸びていません。一方で、ハーレーの場合は、CLV(顧客生涯価値)だけではなく、CRV(顧客紹介・口コミ価値)を意識して経営を進めたため、契約が年々増えています。では、その活動とは具体的にどのようなものでしょうか。

取り組みの一つが、3カ月に1回くらい地域ごとに開催している大きなイベントです。バーベキュー大会を開いたり、ライダーの憧れでもある富士スピードウェイを借り切ったりすることもあります。こうしたイベントには、当然ハーレーのオーナーたちが集まりますが、家族や友人などに加え、深い付き合いはしていない知人や、仕事であいさつした程度の人などにも声を掛けやすい、開かれた場所にもなっています。ハーレーを所有してはいないが憧れのある人、いつか購入してみたいと考えている人たちにとっては、最初のハーレー体験ができるとあって人気があります。

なぜ、そういったイベントを実施するのでしょうか。ハーレーの場合、修理・メンテナンスをしていけば20年くらいは乗れてしまいます。低頻度購入商品であり、高額商品です。つまり、なかなか新規に2台目購入とはなりません。そこで、イベントを開催し、コミュニティを構築することで、顧客本人から奥さんやお子さん、さらには違うメーカーのバイクに乗っているバイク仲間へと、紹介・口コミが広がる仕掛けをしているのです。

このように自社のサービス自体を紹介の理由にするのではなく、それ以外のコミュニティやイベントを紹介の理由にする取り組みは、BtoBでもあります。例えば、あるメーカーが行っているイベントは、そのメーカーの商品を売る場所ではなく、「システム会社同士のマッチングでビジネス機会を作る」という場所として開催されています。成果事例の発表も、必ずしもそのメーカーの商品を活用した事例に限らず、先進的な技術に取り組んだ企業の発表も行われるのです。そのイベントに参加した経営者は、自分たちのビジネスに良い相手先と関係ができて申し訳ないと感じるくらいだと話をしていました。結果として、その場を多くの経営者に紹介し、広めたそうです。

もちろん、まだ検討段階にない顧客を集めても、自社サービスを利用してもらうためには、サービスを体感していただくことなどでニーズを喚起していく必要があります。簡単ではありませんが、「まだ先客」のニーズが喚起でき、自社のサービスを購入していただくフローさえ設計できれば、成熟市場においても、圧倒的に有利な経営を実現できます。

紹介元の活動を指定する

最後は、紹介元の活動を指定することです。「紹介元の活動を指定する」ということは、紹介元が紹介をする際に、「迷い」が生じないように具体的な行動をお願いすることです。

紹介元は、自社の営業ではないため、「迷い」があると紹介をやめてしまいます。例えば、関心がある人がいたら誰に連絡したらいいのか、どういったツールを使って紹介したらいいのか、どんな関心を持った人であれば紹介していいのか、紹介しやすいイベントはいつあるのか、いつ連絡したら営業に連絡が取りやすいのかなどです。そこまでお願いするのは、顧客に失礼ではと感じてしまう部分もあるかもしれませんが、自社の営業でもない顧客にとっては、そういった内容を考えることが負担になってしまい、結果として紹介することが面倒になったり、忘れてしまったりするのです。

先ほどのコンタクトポイントのどの場面で、どのようにお客さまに紹介活動を指定していくかが決まっていて、それを実行できている会社は、効果的なCRV(顧客紹介・口コミ価値)向上のための活動ができているといえます。

まとめ

ここまでCRV(顧客紹介・口コミ価値)について説明してきました。CRV(顧客紹介・口コミ価値)の一番良い点は、顧客満足度と企業の収益が一致することです。外部環境が成長市場から、成熟市場に移向する中で、企業の内部環境が外部の変化に適応できておらず、企業を成長させるための方向性が顧客満足なのか、企業収益なのかが明確にできていないケースが増えています。その中で、CRV(顧客紹介・口コミ価値)を踏まえた経営戦略は、成熟した日本市場における成長戦略を描く上で、非常に重要な戦略となります。

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WRITER筆者

MBA CROWDSOURCING 編集部